「妻となったものは、何処にくちづけされても拒んではならない」クルヴァ王国、最後の姫君であるエア。月蝕の晩、血の色の髪をもって生まれた彼女は、《冥王の申し子》であるとみなされ、誕生してすぐ王宮の外に捨てられた。そして19年後。森で鷹と共に暮らしていたエアは、王国を「乗っ取った」と言うアルドルという男に、突然、婚姻を申し込まれる。本来、ただの騎士である彼は、クルヴァの王族を皆殺しにして成り上がった『暴虐帝』であった。アルドルは王国の正当な王となるため、王家の血を持つエアを求めたのだった。「私にはお前がただ殺すだけの王に思えない――お前の魔法も、とても美しかった」冷酷な人間と言われるアルドルであったが、想像していた『姫君』とは全く異なり、強さと無垢な心を持っているエアに、次第に惹かれていくことになり――。愛を知らない二人の、政略結婚から始まるファンタジー・ラブストーリー。